株式会社on callを立ち上げたキッカケについて教えてください。
私が臨床医として働いていた時に、在宅医療の発展が今後の日本において必要だと感じていました。
実は、病気の多くは慢性疾患と呼ばれる「治らない病気」です。超高齢社会が進み、日本では多くの方が「治らない病気」と向き合い、うまく付き合っていきながら最期を迎えることになります。このような状況の中で、治す医療だけではない視点を持つことの大切さや、在宅医療という必要性のある医療に対し、構造的な課題にアプローチできるサービスを提供したいと考え、株式会社on callを立ち上げるに至りました。
患者さまにとって、どこで・誰と・どのような形で病気と向き合い、そして最期の時を迎えるかは非常に重要な問題です。自宅や介護施設など、これまで自分が暮らしてきた安心できる、心が落ち着く場所で過ごしたいという希望を持たれている方が多く、それを叶えるのが在宅医療です。
この在宅医療において私が課題に思っていたことは、24時間365日の対応を各医療機関が担うことになるという点です。そして事実、夜間や休日の対応は特に医療機関のリソースが逼迫しており、それによって医療の受け手である患者側にとって最良とは呼べない状況になっていることが判ってきました。在宅医療を担う医師数も不足しています。
私がこの業界にできることはなにか?と考えていましたが、在宅クリニックを創るのではなく、日本全国の在宅クリニックを支えることができる存在になろうと決意しました。構造的な課題に直接関わっていきたかったからです。
夜間休日の往診を支えるON CALL。若手医師の在宅医療の参画を増やす起爆剤としたい。
在宅医療を担っている医師の平均年齢を調査してみたのですが、およそ60歳となっており、率直に年齢高いなという印象を受けました。特に心配に思ったのは、今後在宅医療の需要が最大化するであろう2040年を見据えて考えると、医師自体の高齢化も進んでいることや近年の臨床研修制度自体がこの平均年齢を引き上げる要因になり得るということでした。
この状況に一石を投じるには、在宅クリニックを立ち上げるよりも、多くの医療機関を助ける事業を創り、その事業拡大によって一つの医療機関ではできない規模で医師問題を解決していくのが最速であり最善だと考えるようになしました。
自分がまだ若手と呼ばれるこの瞬間に自分の医師ネットワークを通じて在宅医療の成り手を増やそうと決意し、残りの人生で一番若い今しかないと創業に至りました。
私たちのこの事業が在宅医療自体のプレイヤーを増やし、充実させ、業界全体の患者体験を上げる一つの起爆剤にしたいと考えています。
ON CALLで採用している医師は、どのような方なのでしょうか?
ON CALLでは、日中は「急性期病院」と呼ばれる病院で働いている、若手の医師を中心に完全紹介制という形で採用しています。若手医師の特徴としては、柔軟性があること、コミュニケーション能力が高いことなどがありますが、在宅医療は患者さんとのコミュニケーションがとにかく大切です。ベテラン医師の与える絶対的な安心感も大事なのですが、若手にしかできないこともあると確信しています。
また若手医師にとっても、普段急性期病院で自身が担当した患者さまが最終的に地域の開業医にどう引き継がれ、どのような医療が行われているか、患者さまの実態を知る上でとても良い機会だと感じています。将来的に彼らが、日本の高齢社会における地域医療を支える担い手となっていってほしいと考えています。
今後はどのようなことを実現していきたいですか?
在宅医療を提供しているクリニックでは、特に休日や夜間の体制づくりに困っているケースが多く、地域医療にかかる負担は大きくなってしまっています。その部分を私たちのサービスであるON CALLがバックアップすることで、切れ目のない医療を提供することを目指していきたいと考えています。
終末期医療という人の最期に関わる仕事に携わる者として日々考えることは、「患者さま本人がどのように亡くなり、どのような最期を過ごしたのか」は、患者さまだけでなく、そのご家族の人生にも大きく影響すると考えています。私たちは【つながり、寄り添い、社会を支える】という経営理念を掲げていますが、すべての患者さまが “その人らしく” 最期を迎えられるよう、患者さまやご家族の気持ちに寄り添ってサポートする在宅医療サービスを提供していきたいですね。
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